慈善団体標章の不正使用 中国商標当局への登録取消請求が棄却、再審請求へ

J090211X2 2009年3月号(J115)

 台湾で病院を経営するほどの慈善団体「慈済」の標章は中国で不正に商標登録されている。これを受けて、「慈済」は弁護士を通じて中国商標当局に取消審判請求をしたところ、棄却されたため、更に再審請求を提出した。しかし、審査待ち案件は数万件以上にものぼり、中国商標事情に詳しい専門家は、短期間で事件が解決されるのは難しいとの見方を示した。

 「慈済」は企業家などから莫大な寄付金を募集して、病院を経営したり教育施設を設置したりするなど様々な慈善活動を行い、中国四川大震災をはじめ、台湾国民から寄せられた多額の義援金を中国側に渡している。なのに、中国で「慈済」という名称が悪用され、病院や企業、個人に商標登録されているだけでなく、ウェブサイトを開設して寄付を呼びかける詐欺事件も伝えられている。「慈済」は法的手段で問題解決を目指しているが、そう簡単にはいかない。

 既に登録された商標について、「中国商標評審委員」(Trademark Review and Adjudication Board)に登録の取消し請求をすることができる。去年、「慈済」は北京で弁護士を通じて現地の医療機関が「慈済」という標章を無断で使ったことについて、その商標登録の取消し審判を求めたが、棄却された。この決定に対して不服があれば、商標評審委員会の決定通知を受け取った日より30日以内に「北京中級人民法院」に訴訟を提起することができる。ところが、マスコミの報道によると、「慈済」は行政手続に従い、再審を請求したそうだ。

 中国各地で「慈済」という名称が悪用されるケースが少なくない。それについて一々訴訟を提起したり行政手続で権利の救済を求めるには時間や手間がかかる。「馳名商標」(文字通り名を馳せる商標)と認定されれば、問題が早く解決できると提案する人がいる。しかし、たとえ「慈済」は台湾で知らない人はいないと言えども、中国に名を馳せる商標、いわば「馳名商標」として認定されるかどうかは未知数である。

 長いこと台湾商標の中国での権利を確保するために活動している商業総会の張平沼理事長の話では、台湾の商標が中国で乗っ取り登録(冒認出願)されることは数え切れないほど多く、「慈済」は氷山の一角に過ぎないという。

 去年、中国で開催された台、中商標フォーラムの場で、台湾商標の中国における悪意による登録や不正使用問題について、中国側は速やかに対処することを約束した。近年、「阿里山」や「日月潭」など台湾の観光名所や地名が相次いで中国で商標登録された問題で、台湾当局の要請を受けて中国商標当局は登録を取り消したが、これ以外の不正登録事件についてはなお交渉が続いている。(2009.02)

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor