産学間の知識移転 台湾は世界七位・アジア二位、IMD年度報告発表
J090211Y5・J090212Y5 2009年3月号(J115)
スイスに本部を置く調査研究機関の「国際経営開発研究所(IMD, International Institute of Management Development)」が発表した2008年の世界競争力年度報告書で、台湾は「企業と大学間の知識移転」指標における評価点数は6.1点で、世界七位とランクされ、前回比12名も上昇し、1997年以来最も評価が高かった。アジアでは、シンガポールに次いで二位(香港11位、日本20位、韓国41位)。台湾当局がイノベーションに産官学連携を強化したことが奏功したと言える。トップシックスはシンガポール、イスラエル、スイス、アメリカ、カナダ、スウェーデン(詳細は表1をご参照)。
台湾行政院経済建設委員会により、IMDランキングでの格上げは台湾経済当局が地域産学センター、技術研究開発センター及びイノベーション育成センターを設立したことが成果をあげていることの証しであり、近年政府が産業界と学術機関が連携しやすい環境の整備に積極的に取組み、知識と技術の流通を励まし、特に伝統産業への先端技術の導入に力を入れている。
目下、台湾各地で地域産学連携センターが六つ、技術研究開発センターが40箇所、イノベーション育成センターが百箇所を超える。1997年から2008年まであわせてベンチャー企業3000社を設立し、投下資本の増額は500億元を超える。今までに計1500件の特許取得、技術移転800件余、ベンチャー企業45社が新規上場・店頭登録した。
2007年の高等教育部門における研究開発経費で企業委託と補助金によるものが占める割合は5.3%、1999年の4.8%に比べて0.5ポイント増加したことから、産学間の知識交流が日にも増して深まっているのを示しているが、OECD国家の6.07%(2005年)水準には及ばず、まだまだ改善の余地はある。
経済部(経済産業省に相当)「2008年産業技術白書」によれば、1996年~2007年まで国内企業が政府機関・大学・病院が保有する特許を引用した回数は43.2%、研究機関の特許を引用した回数は64%を占めていることから、産学間の知識交流が活発に行われていることがわかる。
世界銀行「知識経済競争力ランキング」により、2008年の台湾の知識経済競争力指数KEI値8.69は1995年(8.19)の1.06倍、同期間の日本(0.97倍)、韓国(0.98倍)を上回る。イノベーションシステム更新はKEI指数の一項目であり、そして産学連携網はイノベーションシステム効率向上の鍵の一つを握っている。要するに産学連携の見事な成果はイノベーションシステム効率及び知識経済競争力の向上につながる。(2009.02)
図一 台湾における「企業と大学間の知識移転」ランキングの推移
注: IMDは2003年、人口規模により調査対象国又は地域を区分し、人口が2000万人を超える国又は地域のなかで、台湾のこの項目での順位が世界四位とランクされている。
表一 IMDによる2008年の「企業と大学間の知識移転」ランキング | ||
国又は地域 | 順位 | 評価指数 |
シンガポール | 1 | 6.93 |
イスラエル | 2 | 6.86 |
スイス | 3 | 6.78 |
アメリカ | 4 | 6.56 |
カナダ | 5 | 6.35 |
スウェーデン | 6 | 6.31 |
台湾 | 7 | 6.10 |
香港 | 11 | 5.96 |
日本 | 20 | 5.01 |
韓国 | 41 | 3.72 |
情報源:IMD 「World Competitiveness Yearbook 2008」 |