米貿易障害報告書、台湾における知的財産権保護の進展を評価 １月にスペシャル３０１条項監視対象から指定解除
J090402Y8・J090401Y8 2009年5月号（J117）
米通商代表部（ＵＳＴＲ）は米東部現地時間３月３１日に２００９年の外国貿易障壁報告（ＮＴＥ）を公表した。同報告書は全部で５４７ページからなり、台湾に関する部分の記述は１２ページで、前向きな表現が多く見られた。
同報告書は米国会が対外貿易政策を制定し、また３０１条項とスペシャル３０１条項の監視対象リストを検討する際の参考となる。台湾は去年末に知的財産権に対する保護が持続的に改善されたため、今年１月にスペシャル３０１条項の監視対象としての指定が解除された。
同報告書は、２００８年に台湾のＧＰＡ協定（政府調達協定）への適用、また台湾における知的財産権保護が進展していることで今年１月にスペシャル３０１条項の監視対象から指定解除されたことに言及したが、米の輸入問題、偽薬の氾濫、医薬品及び医療機器等の価格査定、米牛肉の全面輸入、米輸入豚肉にクレンブテロールが残留していないかの検査、インターネット上の著作権侵害及びＰ２Ｐソフトによる違法ダウンロード等についてはなお高い関心を示している。
台湾における知的財産権保護に関する記述は主に次のようになっている。
１．知的財産権保護はなお台米貿易の重要な課題である。台湾は２００９年１月１６日にスペシャル３０１条項の監視対象から指定解除されたのは１９９８年以来のことである。ＵＳＴＲによると、過去８年の間に台湾は知的財産権保護環境作り及び法整備を整え、もはや過去の「海賊天国」（a haven for pirates）という汚名を晴らし、今や研究開発の聖地に変身しつつある。台湾には引き続き知的財産権への保護を強化し、その他の貿易協力面においても同様の進展が得られるよう期待しているという。さらに、報告でも、米側が関心を示し続けてきた三つの議題に触れている。一つは知的財産裁判所の創設である。もう一つは教育部（文部科学省に相当）が積極的に学校内における知的財産権保護に取り組んでいる。また著作権法改正、特にＩＳＰ法案の立法化も進んでいる。
２．アメリカは引き続き偽薬の氾濫、インターネット上の権利侵害、教科書の違法コピー等を議題に取り上げている。米国際知的財産連盟（ＩＩＰＡ）によれば、同連盟が２００７年に台湾での海賊版等権利侵害により受けた損失はおよそ３億２７８０万ドルという。台湾は中国で作られた模倣品の外国への中継港になっているのではないかという懸念の声が聞かれる。ところが、実際、米税関で押収した台湾からの模倣品は２００２年の２,６５０万ドルから２００７年の３４０万ドルに大幅に減少し、２００８会計年度の上半期にはさらに１３０万ドルに減っている。
３．商標権侵害に関し、多くのブランド品は中国から台湾に密輸されているといわれる。台湾は中国のニセモノの市場になっているだけでなく、台湾を通じてさらに各国へ輸出されていると権利者はいう。税関と知的財産権保護警察隊はブランド品のニセモノ、特にバッグや衣類への取締りを密に行っているものの、台湾市場から依然にその姿をよく見かける。その原因の一つとして、法執行機関の権利侵害者への処分が軽すぎて威嚇効果が不十分であることが挙げられる。
４．インターネット上の著作権侵害及びピアツーピア、いわゆるＰ２Ｐソフトによる違法ダウンロード、そしてネットを通じたコピー商品販売も米側が指摘する最優先課題の一つである。これについて、台湾当局は外国法執行機関との協力を強化するほか、２００７年６月に著作権法を改正し、違法にファイルを伝達する者に科する最高刑を２年に引き上げている。また、インターネットサービスプロバイダー（ＩＳＰ業者）に通知／除去の措置を講じてもらい、そのサービスを悪用したユーザー（権利侵害者）と連帯責任を負わずに済むというセーフハーバー条項を盛り込んだＩＳＰ法案も立法院で審議されている（のちに４月２１日に法案が成立した）。さらに、台湾教育当局は学校での知的財産権保護を強化するため、引き続き「キャンパスにおける知的財産権保護行動方案」を実施し、校内ネットワークへの管理を強化するほか、検察・調査機関も学校周辺のコピー店で教科書の違法コピーをやっていないか取締りを行っている。
