知財法律座談会 裁判官の司法判断の統一図る 特許侵害事件は強制捜査が妥当でない等について共通認識達成

J090624Y1・J090622Y1 2009年7月号(J119)

 知的財産訴訟に関する新制度が始まって間もなく一年を迎える。司法院は知的財産関係事件を取り扱う裁判官の間での司法判断の不一致が生じるのを避け、また知的財産訴訟新制が実務に合致し、理論と実務がうまくかみ合うようにと特別に「2009年度知的財産法律座談会」を開き、知的財産裁判所の裁判長、裁判官全員、通常の裁判所で知的財産関係事件を取り扱う第一審、第二審裁判長、又は裁判官代表、検察官代表、学界の代表、弁護士代表及び行政機関代表らが一堂に会し、意見を交換した。果たして、これにより裁判の質を向上させ、裁判官それぞれの事件における司法判断の統一を図ることができるのか?その成果が期待される。

 会議では、特許侵害は既に刑事罰則が撤廃されたため、刑事的な捜査手法で強制執行をすべきでないとか、仮差押をするには将来の強制執行をする困難度を考慮しておかねばならないとか、特許権者と専用実施権者が一緒に権利を主張できるなどを含めて多くの審判の見解に関して共通認識を達成した。然しながら、これはあくまで会議に参加した代表らが投票で選出した最も妥当な見解であるに過ぎず、裁判官の参考とすることができても、拘束力はない。

 たとえば、裁判官が権利侵害に関わっていると見られる会社に証拠の提供を要求し、拒否される場合、裁判官は司法警察を指揮して強制捜査を行うことができるか?これについて、会議に参加した裁判官の多くは、特許権への侵害に対する刑事的罰則が撤廃された以上、強制執行のような刑事的な捜査方法は妥当でないと考える。

 また、専用実施権についても疑問がある。もしAはその特許権をBに専用実施させ、その後、Cによって権利が侵害されたときに、Aは損害賠償を請求できるのか?Cによる権利侵害はAにロイヤリティー(実施料)の損失を与えるので、被害者であるからには、自己の権利を主張できるはずであるという。

 現行の知的財産事件審理法によれば、民事訴訟を扱う裁判官が当事者が特許権の有効性について争うときに、自ら特許の有効性を認定することができることになっているが、いったん、裁判官が自ら有効性を認め、民事事件が確定した後、行政訴訟でその係争特許を無効とした見解が示された場合、当事者は救済を求めるか?再審査は一つの道ではあるが、しかし再審査で必ずしも救済されるとは限らない。

知的財産法律座談会の結論

法律問題 共通認識
民事事件を扱う裁判官が自ら特許を有効と認定し、事件が確定した後、行政訴訟で更に係争特許が無効との認定が出た場合、当事者は再審査を請求できるのか?  特許が有効かどうかの行政処分は権利侵害かどうかの基礎である。特許が取り消された場合、民事確定判決の基礎が揺るがされるため、再審査の事由に該当する。
裁判官が権利侵害に関与したと見られる会社に証拠の提供を要求し、拒否された場合、裁判官は司法警察を指揮して強制力で捜査を行うことができるのか?  証拠保全は民事訴訟手続に属し、刑事ではないため、強制力の行使は拘束されるべきである。
専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法三法に相当)第86条ノ1により、権利を侵害された者は損失の補償として権利侵害物品の製造に使われたとみられる設備についての仮差押を申し立てることができるが、これは一般の仮差押と同じものなのか?  仮差押の趣旨は将来被告が賠償金を支払うときに資産の移転などが生じるのを防ぐためのものであるため、仮差押をするにあたって、やはり当該物品が侵害物品の生産に使われるかどうかではなく、将来の強制執行の困難度を考慮して行うべきである。
専用実施許諾の場合、特許権が第三者に侵害されたときに、権利者は損害賠償を請求できるか? 特許権者は専用実施権者とともに権利を主張することができる
権利者又は専用実施権者は権利侵害物品の焼却・廃棄を主張することができるか? 
焼却・廃棄請求権を行使するときには、合理且つ正当な範囲内で行うべきあって、公共利益を害してはならない。

(2009.06)

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