中国と知的財産権保護協力協定に調印 優先権の相互承認、権利別ワーキンググループの設置、協力体制の確立がポイント

J100701Y5・J100701Z5 2010年7月号(J131)

 「両岸知的財産権保護協力協定」の調印式が6月29日に中国の四川重慶で開催された。これにより、同じ世界貿易機関の加盟国でありながら、長い間優先権を互いに認めていない局面が打開されるだけでなく、今後双方はさらに「商標」、「特許」、「著作権」及び「品種権」という権利別にそれぞれワーキンググループを設置し、具体的な作業方針を策定するとともに、模倣品・海賊版の取締や事件処理に関する協力体制を確立させることで、リアルとバーチャルの多元市場への監視管理を強化し、産地表示不実商品の流通を食い止め、著名商標及び地理表示への保護を確実なものにする。

 今まで台湾の優良な農産品種や植物の栽培・育成技術が中国へ横流しされたことで、相次ぐ産地偽造(台湾産と偽って外国市場で販売)、そして台湾の輸出先市場でのシェアの奪い取りが台湾企業の利益に多大な被害を及ぼしている。中国との経済協力枠組協定(ECFA)の締結に伴い、中国当局が台湾の植物新品種技術及び研究開発成果を保護することに同意したことは実に重要な意味を持つ。

 近年、台湾の中国への特許・商標出願件数が持続的な成長傾向を示しており、特許検索及び審査結果を互いに利用することができれば、審査時間の短縮、ひいて権利の早期取得による中国市場での不正競争の回避も可能になる。

両岸知的財産権保護協力協定の重点説明

重点項目

内容説明

協力目標 平等互恵原則に基づき、特許・商標・著作権及び植物品種権等知的財産権を保護するための交流と協力を強化し、関連問題の解決策を協議し、知的財産権のイノベーション、応用、管理及び保護を実現する。
優先権の承認 双方は相手国の特許・商標及び品種権に関する第一回出願の出願日の効力の確認に同意する。
品種権の保護 双方は各自公告された植物種類について相手国国民による品種権出願を受け付けること、及び品種権登録出願対象となる植物種類の拡大について交渉することに同意する。
審査協力 特許に関する検索と審査の結果の相互利用、及び品種審査とテストに関する協力及び協議を推進する。
業界協力 特許・商標等についての業界団体の協力を促進し、有効かつ便利なサービスを提供する。
認証サービス 著作権貿易促進のための著作権認証協力体制を構築する。一方の映像・音楽製品が他方で出版する場合、その一方が指定する機構で認証を行う。
事件処理協力体制の確立 1. 海賊版・模倣品を取締る。特にインターネットを経由して書籍・映像・音楽・ソフトなどの海賊版の提供及び幇助を行うウェブサイト、並びに市場に流通する海賊版・模倣品の摘発。
2. 著名商標、地理的表示・著名な産地名を保護し、共同で商標への不正登録を防止し、権利者による著名商標・地理的表示・著名な産地名称の不正登録の取消し請求権の行使を保障する。
3. 果物及びその他の農産品についての虚偽産地表示の市場監視管理強化。
業務交流 1. 業務所管部門人員の打ち合わせ・考察・参観・訪問、経験と技術の交流、セミナーの開催などを推進し、関連業務の研修・訓練を行う。
2. 制度・規制、データバング(統計数値、文献資料)及びその他の関連情報の交換。
3. 関連文書の電子的交換への協力促進。
作業計画策定 特許・商標・著作権・品種権についてそれぞれワーキンググループを各自設置し、具体的な作業方針・方策を策定する。
連絡窓口設置 この協定で議定された事項は、双方の業務所管部門が指定する担当者が互いに連絡して実施する。必要なときは、双方の同意を経て他の機関を指定して連絡を行うこともできる。

 「海峡両岸経済協力枠組協定」及び「海峡両岸知的財産権保護協力協定」の締結に伴う関連事務の推進にあわせて、行政院会議は7月1日、「商標法」第4条及び第94条に関する改正案、「特許法」第27条及び第28条に関する改正案並びに「植物品種及び種苗法」第17条に関する改正案について閣議決定を行い、立法院の審議に付することにした。

商標法第4条、第94条改正条文対照表

改正条文

現行条文

第4条 中華民国と優先権を相互に承認する国又は世界貿易機関加盟国において、法により登録出願がなされた商標であって、その出願人は第一回の出願日の翌日より6ケ月以内に中華民国に登録を出願したものは、優先権を主張することができる。
 前項の規定により優先権を主張するときは、登録出願と同時にその旨を声明し、並びに願書に第一回出願の出願日及びその出願を受理した国又は世界貿易機関加盟国の名前を明記しなければならない。
 出願人は出願日の翌日より3ケ月以内に前項国又は世界貿易機関加盟国が受理したことを証明する出願書類を提出しなければならない。前二項の規定に違反したときは、優先権を失う。
 優先権を主張するときは、その登録出願日は優先日を基準とする。

第4条 中華民国と優先権を相互に承認する国において、法により登録出願がなされた商標であって、その出願人は初回の出願日の翌日より6ケ月以内に中華民国に登録を出願したものは、優先権を主張することができる。
 前項の規定により優先権を主張するときは、登録出願と同時にその旨を声明し、並びに願書に外国での出願日及びその出願を受理した国の名前を明記しなければならない。
 出願人は出願日の翌日より3ケ月以内に当該外国政府が受理したことを証明する出願書類を提出しなければならない。
 前二項の規定に違反したときは、優先権を失う。
 優先権を主張するときは、その登録出願日は優先日を基準とする。

第94条 本法は公布日から6ヶ月経過した日に施行する。  
 本法改正条文の施行期日は、行政院が定める。
第94条 本法は公布日から6ヶ月経過した日に施行する。

特許法第27条、第28条改正条文対照表

改正条文

現行条文

第27条 出願人が同一の発明について、中華民国と互いに優先権を認めている国又は世界貿易機関の加盟国において、法により第一回の特許出願をし、且つ第一回の特許出願の日から12ヶ月以内に中華民国に特許出願をするときは、優先権を主張することができる。
 前項規定により、出願人が一出願について二以上の優先権を主張するときは、その優先権期間の起算日は最先の優先日の次の日とする。
 外国出願人が世界貿易機関の加盟国でない国の国民であり、その所属する国は我が国と優先権を互いに認めていない場合であっても、世界貿易機関の加盟国又は互恵国の領域内に住所又は営業所を設けているときは、第1項規定により優先権を主張することができる。
優先権を主張するものについて、その特許要件の審査は優先日を基準とする。
第27条 出願人が同一の発明について、世界貿易機関の加盟国又は中華民国と互いに優先権を認めている外国において、法により第一回の特許出願をし、且つ第一回の特許出願の日から12ヶ月以内に中華民国に特許出願をするときは、優先権を主張することができる。
 前項規定により、出願人が一出願について二以上の優先権を主張するときは、その優先権期間の起算日は最先の優先日の次の日とする。
 外国出願人が世界貿易機関の加盟国にでない国の国民であり、その所属する国は我が国と優先権を互いに認めていない場合であっても、世界貿易機関の加盟国又は互恵国の領域内に住所又は営業所を設けているときは、第1項規定により優先権を主張することができる。
 優先権を主張するものについて、その特許要件の審査は優先日を基準とする。

第28条 本前条規定により優先権を主張するときは、特許出願と同時に声明を提出し、並びに願書に第一回の出願の出願日及びその出願が受理された国又は世界貿易機関の加盟国を明記しなければならない。
 出願人は出願日から4ヶ月以内に、前項国又は世界貿易機関の加盟国が受理したことを証明する出願書類を提出しなければならない。
 前二項規定に違反したときは、優先権を失う。 

第28条 本前条規定により優先権を主張するときは、特許出願と同時に声明を提出し、並びに願書に外国での出願日及びその出願が受理された国を明記しなければならない。
 出願人は出願日から4ヶ月以内に、前項国の政府が受理したことを証明する出願書類を提出しなければならない。
 前二項規定に違反したときは、優先権を失う。

植物品種及び種苗法第17条改正条文対照表

改正条文

現行条文

第17条 出願人が同一の品種について、中華民国と互いに優先権を認めている国又は世界貿易機関の加盟国において、法により第一回の品種権出願をし、且つ第一回の出願日の翌日から12ヶ月以内に、中華民国に品種権出願をするときは、優先権を主張することができる。
 前項規定により、優先権を主張するときは、出願時にその旨を声明し、並びに出願日の翌日から4ヶ月以内に、前項国又は世界貿易機関の加盟国が受理したことを証明する出願書類を提出しなければならない。これに違反したときは、優先権を失う。
 優先権を主張するものについて、その品種権要件の審査は、優先日を基準とする。 
第17条 出願人が同一の品種について、中華民国と互いに優先権を認めている外国において、法により第一回の品種権出願をし、且つ第一回の出願日の翌日から12ヶ月以内に、中華民国に品種権出願をするときは、優先権を主張することができる。
 前項規定により、優先権を主張するときは、出願時にその旨を声明し、並びに出願日の翌日から4ヶ月以内に、当該外国政府が受理したことを証明する出願書類を提出しなければならない。これに違反したときは、優先権を失う。
 優先権を主張するものについて、その品種権要件の審査は、優先日を基準とする。

 (2010.07/2010.06)
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