年間千億規模の科学技術予算、経済効果不十分 施策見直しを、監察院調査発表

J100602Y5・J100531Y5 2010年7月号(J131)

 最近5年間の台湾の科学技術予算は年々千億元近くに達するものの、科学技術発展基金として補助金を受けた行政院所轄機関による国庫への返納分は一貫して7億元前後で足踏み状態が続いている。そして2006年から2008年にかけて国内産業による特許等使用料の支払は千億元にのぼり、2009年にはさらに千億元を超えている。これとは対照的に、海外から受け取るライセンス料収入は70~80億元にとどまり、恒常的に赤字構造にあることが、監察院の調査で明らかにされた。数々の国際発明品展で高く評価された優秀な人材や技術力がありながらも、外国企業からの技術の取り入れが依然に多く、産官学連携による研究開発の成果を産業としての実用化・商品化を促進したり支援したりすることが真の技術立国には不可欠であり、科学技術予算の無駄遣いをなくすための施策の見直しが求められている。

 次に台湾の科学技術発展政策の決定過程を説明する。
1.科学技術発展政策における知的財産の創出・運用に関する管理体制:
  1978年から全国科学技術会議を開き、これから先4年間の国家科学技術発展計画を策定し、各段階に おける技術開発の重点対象を決め、政策決定と技術開発を推進する根拠としている。
科学技術基本法(1999年に制定)は、科学技術発展のために政府の補助により得た成果(知的財産権)の帰属と運用、及び科学技術研究開発を促進するための科学技術基金の運用方針を明確に定めている。2001年に開かれた第六回全国科学技術会議で、知的財産権を、イノベーション、保護、運用及び教育という四つの議題に分けて検討し、4年おきに科学技術発展に関する総合的かつ計画的に実施すべき重要施策を定めることにしている。
2.最近5年間の特許・商標・著作権等の知的財産のロイヤリティーに関連する統計を次のとおりまとめた。

表1 特許・商標等使用料の国際収支関連統計
単位:百万ドル

項目

年度

特許・商標等使用料(受取)

特許・商標等使用料 (支払)

2005

234

1,796

2006

244

2,321

2007

220

2,575

2008

181

3,015

2009

242

3,424


3.政府機関による知的財産の研究開発、創出、管理及び運用に関する統計:

表2 部門別研究開発経費
単位:百万元(1元=2.83円)

年度

項目

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

全国研究開発経費 263,271 280,980 307,037 331,386 351,405
全国研究開発経費のGDP(国内総生産)に対する比率

2.32%

2.39%

2.51%

2.57%

2.77%

全国研究開発経費-経費の出所別
企業部門 政府部門
その他の国内部門

64.8%
33.6%
1.6%

66.9%
31.5%
1.5%

67.2%
31.4%
1.4%

68.8%
29.9%
1.3%

70.4%
28.2%
1.3%

全国研究開発経費-執行部門別
企業部門
政府部門
高等教育部門(大学・大学院等)
私的非営利部門


64.7%
23.2%
11.5%
0.6%


67.0%
21.0%
11.4%
0.5%


67.5%
19.9%
12.2%
0.4%


69.1%
18.3%
12.2%
0.4%


70.7%
16.8%
12.2%
0.3%

基礎研究経費の全国研究開発経費比(%)

11.3%

10.3%

10.2%

10.0%

10.2%

企業研究開発経費の産業付加価値比

1.91%

2.04%

2.16%

2.26%

2.51%


表3 各部会への科学技術経費配分
単位:百万元(1元=2.83円)

年度

項目

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

合計

70,421

77,604

81,853

86,146

91,022

中央研究院

7,402

8,531

8,938

9,293

9,858

国史館

35

38

11

10

25

行政院(内閣府)

43

43

45

74

国家科学委員会

25,773

28,226

30,817

33,412

35,983

科学開発基金

3,447

3,483

4,190

2,474

1,594

経済部(経済産業省)

23,318

25,883

25,509

27,515

29,364

行政院農業委員会
(農林水産省に相当)

3,707

3,995

4,264

4,033

4,142

行政院衛生署
(厚生労働省に相当)

3,609

4,215

4,396

4,709

5,089

教育部(文部科学省に相当)

852

839

889

1,535

1,560

行政院原子力委員会

936

827

992

1137

1292

内政部(総務省)

232

270

373

456

363

法務部(法務省)

24

47

81

85

交通部(国土交通省に相当)

693

711

818

841

888

(華)僑(業)務委員会

13

人事行政局(人事院に相当)

20

19

新聞局(内閣大臣官房政府広報室に相当)

31

36

32

行政院環境保護署(環境省に相当)

78

55

77

67

66

国立故宮博物院

107

105

64

43

42

行政院経済建設委員会

50

49

54

84

行政院研究発展考察委員会

94

81

82

107

行政院文化建設委員会

23

20

5

13

行政院労働者委員会(厚生労働省に相当)

171

184

217

221

241

行政院公共工事委員会

35

31

25

20

20

行政院先住民族委員会

20

行政院客家委員会
(客家民族の伝統文化関連業務所管)

56

50

注:この統計は国防科学技術経費を除く。

表4-1 各補助機関の研究収入
単位:千元(1元=2.83円)

年度

項目

2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
総計

704,669

777,549

761,351

772,177

770,802

中央研究院

9,734

5,160

12,968

20,376

19,432

経済部

630,056

680,989

642,442

631,663

614,607

国家科学委員会

35,599

38,036

38,520

41,673

50,215

農業委員会

9,385

19,380

26,589

40,050

37,679

衛生署

192

16

340

1,846

901

教育部

0

11

1

0

0

原子力委員会

17,330

28,474

31,877

3,141

42,146

労働者委員会

1,653

2,082

3,056

32,476

2,412

故宮博物院

15

2,896

5,197

377

2,884

内政部

705

505

361

576

527

表4-2 補助機関の研究収入の国庫返納状況
単位:千元

項目

補助機関

科学技術予算の年間平均値 国庫返納比率

2006年

2007年

2008年

2009年

平均返納比率

実際の返納額

返納比率

実際の返納額

返納比率

実際の返納額

返納比率

返納予測値

返納比率

合計

777,549

 

760,249

 

772,177

 

770,802

中央研究院

9,154,658

20%

5,160

0.28%

12,968

0.71%

20,376

1.11%

19,432

1.06%

0.79%

経済部

27,067,860

50%

680,989

5.03%

642,442

4.75%

631,663 

4.67%

614,607

4.54%

4.75%

国家科学委員会

32,625,479

20%

38,036

0.58%

38,520

0.59%

41,673

0.64%

50,215

0.77%

0.65%

農業委員会

4,108,375

20%

19,380

2.36%

26,589

3.24%

32,476

3.95%

37,679

4.59%

3.53%

衛生署

4,602,549

20%

16

0.00%

340

0.04%

377

0.04%

901

0.10%

0.04%

原子力委員会

1,061,950

20%

28,474

13.41%

31,877

15.01%

40,050

18.86%

42,146

19.84%

16.78%

労働者委員会

215,804 

20%

2,082

4.82%

1,954

4.53%

1,846

4.28%

2,412

5.59%

4.80%

故宮博物院

63,536

20%

2,896

22.79%

5,197

40.90%

3,141

24.71%

2,884

22.69%

27.77%

内政部

365,601 

20%

505

0.69%

361

0.49%

576

0.79%

527

0.72%

0.67%

注:科学技術基本法、政府科学技術研究発展成果帰属及び運用弁法(規則)により、補助機関が科学技術研究発展を補助し、委託し又は出資することにより得た研究開発成果について、所有権が政府に帰属すべきと認定されたものを除き、研究発展を実施した機構が所有するものとする。その知的財産権及び成果が政府に帰属するものは、付属機関における予算手続きに従い、政府が保管・運用をするため、国家科学技術発展基金に納入しなければならない。また研究発展を実施した機構が公立・私立学校、公立研究機関の場合、研究開発成果による収入の20%を、その他の実施機関の場合はその50%を補助機関に納入しなければならない。

表5 被補助機関の国庫補助金受入額対研究開発成果の収入
単位:千元

年度

被補助機関(項目)

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

合計

工業研究院 受入額

8,035,400

9,283,004

9,249,545

9,452,751

9,371,136

45,391,836

開発収入(技術移転+知的サービス収入)

8,487,115

8,006,030

8,201,468

8,356,662

7,840,697

40,891,972

成果/投入資金

105.62%

86.24%

88.67%

88.40%

83.67%

90.09%

情報通信工業振興会(資策会) 受入額

808,109

825,403

861,691

960,709

1,262,962

4,718,874

収入(成果報酬+サービス収入)

497,010

510,011

536,787

488,441

554,593

2,586,842

成果/投入資金

62%

62%

62%

51%

44%

55%

精密機械研究発展センター 受入額

49,700

66,348

64,622

67,991

97,592

346,253

収入(成果報酬+サービス収入)

7,147

8,006

8,006

7,844

16,591

47,594

成果/投入資金

14.38%

12.07%

12.39%

11.54%

17.00%

13.75%

農業試験所 受入額

461,938

457,227

444,423

447,277

528,245

2,339,110

成果(成果報酬のみ)

7,887

8,572

9,918

8,729

14,667

49,773

成果/投入資金

1.71%

1.87%

2.23%

1.95%

2.78%

2.13%

畜産試験所 受入額

226,390

224,210

231,130

285,330 

313,310

1,280,370

収入(成果報酬+サービス収入)

96,580

99,090

84,210

96,640

95,950

472,470

成果/投入資金

43%

44%

36%

34%

31%

37%

国家衛生研究院(医学研究センター) 受入額

1,386,273

1,645,745

2,023,242

2,213,466

2,236,470

9,505,196

収入(成果報酬+サービス収入)

11,815

3,410

2,825

16,998

31,715

73,763

成果/投入資金

1.36%

0.21%

0.14%

0.77%

1.42%

0.78%

 以上の統計に示されているように、2006年から2008年にかけて国内の産業界が知的財産権を利用するために外国企業に支払うロイヤリティー或いはライセンス料は年間千億元近くに達し、そして2009年にはさらに千億元を超えている。一方、科学技術予算は2005年の704億元余から2009年には910億元余に増加しつつあるなかで、行政院所轄機関から科学技術発展基金に納入された研究開発成果の収入(ロイヤリティー、ライセンス収入等)はここ5年間横ばいの7億元余だった。平均返納比率を見てみると、故宮博物院の27.77%、原子力委員会の16.78%を除き、経済部、農業委員会及び労働者委員会はいずれも1ケタ程度にとどまり、中央研究院(0.79%)、国家科学委員会(0.65%)、衛生署(0.04%)、内政部(0.67%)はさらに1%を下回っている。政府機関による技術開発事業への資金投入と成果の大きな隔たりが、知的財産の研究開発、創出、運用及び管理への取り組みに問題があることを浮彫にしている。(2010.06/2010.05)

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