広告が商標になるのか?黒松の「花太郎」訴訟は敗訴

J120415Y2 2012年5月号(J153)

 長い歴史を持つ飲料メーカー、黒松股份有限公司(HeySong Corporation、以下「黒松」)は相撲の力士「花太郎」を主人公にした緑茶のコマーシャルフィルムを制作して話題を集めたが、台中の川井国際餐飲有限公司(以下「川井国際」)が「花太郎」を先に商標登録したことに対して異議申立を行っていた。異議申立は不成立となり、行政訴願も提出したが却下され、知的財産裁判所に対して行政訴訟を提起していた。しかしながら知的財産裁判所は、力士「花太郎」はCMのキャラクターであり、商標ではないため、黒松の訴えを棄却した。【知的財産裁判所行政判決-100,行商訴,170-20120412】
 黒松は知的財産裁判所に対して以下のように主張した。同社は2009年4月から茶花緑茶と花太郎の商標コンセプトを初めて創作し、多くのユーモラスで魅力的な花太郎のCMフィルムを制作して人気を集め、黒松の茶花緑茶は1年3ヵ月で合計433万ダースを売り上げて、花太郎を演じた俳優の人気も高まった。
 しかしながら、台中の川井国際が2009年10月に「花太郎」を商標登録し、同社が経営する日本料理(寿司、刺身)及びレストランの商標とした。さらにネット上で「花太郎不変麻豆,要你変身為美食家(花太郎はモデルにならず、あなたにグルメに変身してもらいたい)」という宣伝コピーを掲載した。広告の内容が花太郎の「你想轉行當model嗎?(モデルに転職したいですか?)」という黒松のCMコンセプトとは同じであり、川井国際は悪意を以って先に商標を登録したため、商標法に抵触している。
 川井国際の「花太郎」商標は黒松よりも遅く使用し始めている。また黒松の販促を通じて、消費者は「花太郎」から黒松の茶花緑茶を連想し、全国的に知名度が高い商標になっているのに対して、川井国際の「花太郎」商標は中部のレストランで使用されるに止まっている。黒松の「花太郎」は識別性が高いため保護を受けるべきである。
 これに対して川井国際側の主張によれば、黒松はまだ「花太郎」の商標登録を出願していない。また花太郎はCMのキャラクターにすぎず、また黒松が創作した商標ではなく、多くの日本のドラマ、映画、漫画で以前から使用されている。同社は黒松が「花太郎」をCMキャラクターに使っていることを知らなかったため、知名度を利用していない。
 裁判官が調査したところ、花太郎は黒松のオリジナルではなく、黒松は花太郎をCMキャラクターとして商品の販促を行ったにすぎない。商品の商標登録は「黒松」であり「花太郎」ではない。花太郎はCMキャラクターの名称であり、商標ではなく、また黒松は川井国際が悪意を以って先に商標を登録したという証拠を提出していないとして、黒松の訴えを棄却した。(2012.04)

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