テスト機写真をFBに投稿、秘密妨害罪で6ヵ月の懲役と250万新台湾ドルの罰金

J130326Y4 2013年4月号(J164)

 台湾三星電子股份有限公司(英文名Samsung Electronics Taiwan Co., Ltd.、以下「台湾サムスン」)が2012年耕興股份有限公司(Sporton International Inc.、以下「耕興」)新竹ラボに対して当時発売前の「GalaxyS III」プロトタイプの試験を委託したところ、エンジニアの洪○○が携帯電話で撮影しフェースブックに投稿したため、サムスンが激怒した。洪○○は耕興から告訴され、民事訴訟で250万新台湾ドルの罰金、刑事訴訟で秘密妨害罪により6ヵ月の懲役という判決を受けた。(台湾新竹地方裁判所刑事判決-102,審智易,2-20130325/台湾新竹地方裁判所民事判決-101,労訴,24-20121112
 判決文によると、耕興の新竹ラボにおいてエンジニアとして働いていた洪○○は20124月に台湾サムスンから委託された発売前の「GalaxyS III」の試験を担当した際、携帯電話を使って4枚の写真を撮りフェースブックに投稿した。投稿において「今日、台湾のラボで見たもの」、「間もなく発売されるらしい」などと記載し、ネット上で話題となった。台湾サムスンは発売前の携帯電話端末が外部に漏えいし、さらには耕興の新竹ラボから流出したことを発見し、耕興に調査を要求した。洪○○は当初否認していたが、会社からフェースブックのID番号等の証拠をつきつけられ、興味本位で写真をネットに投稿したことを認めるとともに、故意に権利を侵害したのではないと述べた。
 
耕興によれば、今回の事件で激怒したサムスンから、3ヵ月間耕興との取引を停止すると言い渡された。耕興は試験の報酬である31,000米ドル余りを受け取れなかった上、信用を大きく毀損された。耕興は入社した職員に対して守秘の念書に署名するよう要求しており、その中で任職期間中及び離職後に会社と顧客に関する資料に対して守秘義務があり、違反した場合は500万新台湾ドルの罰金を科すと規定しているため、洪○○に500万新台湾ドルの賠償を請求した。
 
裁判官は、洪○○がテスト機を無断で撮影し、フェースブックに投稿した行為は、台湾サムスンの営業秘密を侵害するとともに、耕興に対して署名、提出した守秘念書に違反するものであると認めた。洪○○がネットにアップロードした写真は、携帯電話の外観と内部の連結インターフェースのみを開示しており、携帯電話の機能については開示していないため、市場の期待や販売率への影響は大きくないものの、耕興の信用等に少なからぬ損害を与えた。一方で、洪○○が子ども1人を扶養しなければならないことを酌量し、違約金を250万新台湾ドルに減額するのが妥当であると判断した。刑事訴訟について、新竹地方裁判所は、洪○○がコンピュータ設備を利用して業務上知悉した又は所持した営業秘密を漏洩した罪に対して、刑事訴訟法第273条の1、第299条第1項前段、刑法第317条、第318条の2、第41条第1項前段に基づき、6ヵ月の懲役に処すとの判決を下した。(2013.03

付注:本件の論罪には適用された法律条文は以下の通り。

中華民国刑法第317
法令又は契約により業務上知悉した又は保持した営業秘密を守る義務があり、正当な理由なくして漏洩した場合は、1年以下の懲役、拘留に処し、又は1,000万新台湾ドル以下の罰金を科すものとする。

中華民国刑法第318条の2
コンピュータ又はその関連設備を利用して第316条乃至第318条の罪を犯した場合、量刑を2分の1加重する。

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