最新特許法条文改正の概要 2013年5月31日に立法院で可決(三読通過)、6月13日より公布施行

J130603Y1 2013年6月号(J166)

一、発明、実用新案の「二重出願」制度(第3241条): 

1)二重出願の「権 利接続制度」の設立(発明特許を選んだとき、今までの実用新案権が初めから無効となること はない)

   ★又、同時二重出願は出願の際それ を声明する必要がある。 

(第32条):  

 201311日より施行 された現行法では、「二重出願」制度(即ち同一の者が同一の創作について、同日にそれぞれ 発明特許及び実用新案登録の出願をする)を合法化且つ明文化しているが、現行法における「 二重出願」制度は、「権利不接続」、つまり出願人が発明特許の特許査定前に知財局の通知を 受けた後、発明特許を選んだとき、その実用新案権が初めから存在していないと見なす仕組み である。しかし、この制度の運用では、特許出願人にかなり不利である。それは、もし発明特 許を選んだ場合、実用新案権が初めから存在していないと見なされ、この前より受けていた保 護が水泡に帰し、且つ実用新案を選んだ場合、受けられる保護期間が10年に短縮さ れるからである。また、実用新案の保護期間内に侵害された場合、たとえ当該発明がまもなく 特許査定を受けるとしても、出願人は、保護期間がより長い発明特許の放棄を余儀なくされる 。更に、出願人がもし公告を許可された実用新案により実施許諾や他人への譲渡、又は裁判所 への侵害訴訟提起をした場合、その後発明特許を選んで実用新案権が初めから存在しないこと になったとき、その取得したロイヤルティ又は代金を返還しなければならないのか、それとも 、他人に対して特許侵害の訴訟を提起して、取得した賠償金を返還しなければならないかにつ いて、実務上、争議が絶えなかった。それ故、同条は現行法の公布施行前から既に特許業界か ら非難されている。 

 争議の 激化に歯止めをかけるために、今回の法改正では「権利接続制度」を明文化した。即ち出願人 が、特許査定前に知財局からの通知を受けた後、発明特許を選んだとき、その実用新案権は発 明特許の公告日より消滅すると明文で規定されている。但し、二重出願の出願人は、出願時に それぞれ声明の義務を負い、もし二出願とも未声明又はその中の一出願について未声明の場合 、特許を付与しないものとする。

2二重出願制度を適用する場合、溯及 による賠償請求方式は実用新案権の損害賠償請求権行使と特許権の公開補償金請求権行使の中 から1つを選んで行使しなければならない

(第41条):

「二重出願」制度 は改正後「権利接続制」が採用されており、発明特許公告前の他人による実施行為について、 もし補償金及び実用新案権の損害賠償を同時に主張できる場合、特許出願者に不当利得が生じ ることになるので、改正条文の規定では、補償金と実用新案権の損害賠償のどちらか 1つを選んで行使しなければならないと権利者に要求している。

二、「損害賠償計算」規定の改正(第97条):

1)「合理的ロイヤリティー」は損害賠償の計 算基準の基礎だけとし、将来損害賠償金額は実際の許諾関係におけるロイヤリティー金額の損 害賠償より高くなる可能性があると明らかに規定。

 現行法では、「 合理的ロイヤリティー」を損害賠償の計算方式とし、「当該発明特許の許諾実施により受取る ことができるロイヤリティーに相当する金額を受けた損害にする」と規定されている。但し、 この規定は侵害行為者の先に許諾を取得する意欲をなくさせる恐れがある。一般の許諾関係の ライセンシーと比べると、侵害者は許諾関係の別途費用(例えば会計検査の義務)を負担する 必要がなく、たとえ許諾をまだ受けていなくても、以後侵害が発見されたとき、多くても事前 に許諾を受けたロイヤリティーと同一の金額を賠償すればよいだけなので、権利侵害訴訟の特 許権者はかえって別途費用(例えば訴訟費用、弁護士費用)を負担しなければならないという 不公平な結果に陥るものである。今回の改正はドイツ特許法第139条第2項後段の立 法例を参照し、損害賠償の合理的ロイヤリティーの金額は実際の許諾関係によるロイヤリティ ーの金額と必ず同一であるとは限らず、合理的ロイヤリティーによって計算した損害賠償金額 が、以後許諾関係のロイヤリティーの金額より高い可能性があり、不法を懲罰することができ ると明らかに規定した。

2)「三倍の懲罰性賠償 金」制度の回復:

 三倍の懲罰性賠 償金の制度は本来既に2013/01/01以前に台湾の特許法に存在していたが、前回 改正のとき、それは英米法の制度と認められ、損害補填が採用されている台湾法制と異ってい るので、現行特許法からその制度が削除された。しかし、台湾のそのほかの知的財産権法にお いて、例えば著作権法、営業秘密法及び公正取引法では共に懲罰性損害賠償の規定がある。且 つ旧法の懲罰性賠償金制度が採用されていた時期も、裁判所は故意の認定及び侵害状況の斟酌 について、全て個別案件を通して判断基準を設けていたので、裁判所が濫用して被告に対して 、巨額の賠償金を課す状況は見られなかった。知的財産権は無体財産権という特性があり、損 害賠償の計算が元々困難なので、再び「三倍の懲罰性賠償金」制度を回復したわけである。

三、実用新案技術評価書の提示による警告(第116条) :

 実用新案は形式審査が採用されており、特許 要件に合致するか否かについて実体審査を行わずに実用新案権を与えるので、権利者による警 告書の濫用を防止するため、今回の特許法の改正では、権利者がその実用新案権を主張する際 は、実用新案技術評価書を提示し、先ず警告しなければならず、実用新案技術評価書を提示した警告を行わないなら、その権利を行使することができないと 明らかに規定した。但し、実用新案技術評価書 の提示による警告は、やはり実用新案権者が裁 判所に訴訟提起の権利を行使する前提要件ではない。

付録:改正前後の条文対照表

2013531日可決の条文 201311日より施行の現行法
32

 同一の者が、同一の創作について、同日にそれぞれ発明特許及び実用新案登録の出願をするときは、出願時にそれぞれ声明しなければならない。その特許を受ける査定が下されるまでに、既に実用新案権を取得したとき、特許主務官庁は、期間を限定していずれかを選んで出願をする旨を出願人に通知しなければならない。出願人がそれぞれ声明しないか、又は期限が満了するまでに何れかを選ばなかったときは、特許を受けることができない。

 出願人が、前項規定により、発明特許を選んだとき、その実用新案権は発明特許の公告日より消滅する

特許査定前に、実用新案権が当然消滅したとき、又は取消しが確定したときは、特許を受けないものとする。

同一の者が、同一の創作について、同日にそれぞれ発明特許及び実用新案登録の出願をするときは、その特許を受ける査定が下されるまでに、既に実用新案権を取得したとき、特許主務官庁は、期間を限定していずれかを選んで出願をする旨を出願人に通知しなければならない。期限が満了するまでに何れかを選ばなかったときは、特許を受けることができない。

 出願人が、前項規定により、発明特許を選んだとき、その実用新案権がはじめから存在しないとみなす。

特許査定前に、実用新案権が当然消滅したとき、又は取消しが確定したときは、特許を受けないものとする。
41

 発明特許出願の出願人が出願公開後、書面をもって発明特許出願の内容を通知したにもかかわらず、通知を受けた後、公告がなされる前にその発明の商業上の実施を継続していた者に対し、発明特許出願が公告された後、適切な補償金を請求することができる。

発明特許出願がすでに公開されたことを明らかに知っていながら、公告前に当該発明について商業上の実施を継続していた者に対しても前項の請求をすることができる。

前二項の規定の請求権はその他の権利の行使を妨げない。但し本法第32条により、発明特許及び実用新案をそれぞれ出願し、且つ実用新案権を取得したものは、補償金の請求または実用新案権の行使から1つを選んで主張できるのみである。

第一項、第二項の補償金請求権は公告の日から起算して、二年間権利の行使がなかったときに消滅する。
 発明特許出願の出願人が出願公開後、書面をもって発明特許出願の内容を通知したにもかかわらず、通知を受けた後、公告がなされる前にその発明の商業上の実施を継続していた者に対し、発明特許出願が公告された後、適切の補償金を請求することができる。
 発明特許出願がすでに公開されたことを明らかに知っていながら、公告前に当該発明について商業上の実施を継続していた者に対しても前項の請求をすることができる。
 前二項の規定の請求権はその他の権利の行使を妨げない。
 第二項の補償金請求権は公告の日から起算して、二年の間に権利の行使がなかったときに消滅する。
97

 前条規定により、損害賠償を請求するときは、次の各号のいずれを選んでその損害を算定することができる。

一、民法第216条の規定による。但し、証拠方法を提出してその損害を証明することができないとき、発明特許権者がその特許権を実施して通常得られる利益より、損害を受けた後に同一特許権を実施して得られる利益を差引いた差額をその受けた損害の額とする。

二、侵害者が侵害行為によって得た利益による。

三、当該発明特許の実施許諾で得られる合理的なロイヤリティーを基礎にしてその損害を計算する。

 

 前項規定により、もし侵害行為が故意である場合、裁判所は被害者の請求に応じて、侵害状況に基づき損害額以上の賠償を決定することができる。

但し、既に証明済みの損害額の三倍を超えてはならない。

 前条規定により、損害賠償を請求するときは、次の各号のいずれを選んでその損害を算定することができる。

一、民法第216条の規定による。但し、証拠方法を提供してその損害を証明することができないときは、発明特許権者はその特許権を実施して通常得られる利益より、損害を受けた後に同一特許権を実施して得られる利益を差引いた差額をその受けた損害の額とする。

二、侵害者が侵害行為によって得た利益による。

三、当該発明特許の実施許諾で得られるロイヤリティーに相当する金額をその損害とする。
116  実用新案権者が実用新案権を行使するとき、もし実用新案の技術評価書を提示しない場合、警告を行ってはならない。  実用新案権者が、実用新案権を行使するときは、実用新案の技術評価書を提示して警告しなければならない。
159

 本法の施行期日は行政院によりこれを定める。

本法の2013531日に改正した条文は、公布日より施行される。
 本法の施行期日は行政院によりこれを定める。

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