行政院が著作権法一部条文改正案を可決、非親告罪の範囲を大幅に調整

J160812Y3・J160811Y3 2016年9月号(J205)
    経済部知的財産局によると、2016年8月11日行政院会議において「著作権法」一部条文改正案及び第98条改正案が可決されたという。今回、著作権法第98条改正案が提出されたのには以下の理由がある。「中華民国刑法」及び「中華民国刑法施行法」一部条文改正案が2016年7月1日から施行され、施行日前に制定されたその他法令の没収、追徴、追納、補償に関する規定は今後適用されなくなる。しかし現行著作権法第98条ただし書には「光ディスク公訴罪」違反の物(例えば海賊版光ディスクや複製のための機材)を没収してもよいと規定されているが、刑法の新制度(第38条)の適用に回帰すると、それが犯罪行為者の所有物でなければ、法執行機関はそれが正当な理由なくして提供された又は取得したものであることを証明する必要があり、それによって始めて裁判所に没収を請求することができるため、法執行機関の立証及び認定手続きの負担が増え、立証が困難な海賊版は再び市場で流通し、著作権を侵害し続ける可能性がある。よって「光ディスク公訴罪」違反により没収できる物は、著作権法の特別規定によって職権で没収してもよく、これにより保護を強化し、刑法の適用を排除できるようにする。
    さらにわが国の法制を環太平洋戦略的経済連携協定(略称TPP)の規定に適合させるため、対応する一部条文について改正案が提出された。
    今回の著作権法改正の重点は次のとおりである。
一.営利を意図して又は営業を行うために使用し、コピーガード措置保護規定に違反したものに対しては刑罰を科す。例えば企業が合法のソフトウェアを購入せずに、違法ソフトウェアをインストールしシリアルナンバーを入力して使用する行為である。また電子的権利管理情報規定に違反する刑事責任についても、その構成要件をコピーガード保護規定違反とすり合わせたうえで一致させる。(改正条文第96条ノ1)
二.著作権侵害の非親告罪の範囲を調整する(改正条文第91条、第91条ノ1及び第100条)
(一)法改正後、著作権法第91条第2項規定の販売若しくは貸与を意図して複製する行為、第91条ノ1第2項規定の営利を意図して複製物を頒布する行為について、その複製物がデジタルフォーマットであるときは非親告罪とするとともに、デジタル技術の発展とともにネット海賊版が増加しているのに対応して、著作権法第92条の公衆送信権侵害規定も非親告罪とする。これにより法執行者は自ら権利侵害事件の捜査を行い、権利者の訴追は必要なくなり、デジタル環境における著作権侵害行為を有効的に食い止めることが期待される。
(二)重大ではない侵害行為が国家権力による訴追を受ける懸念を軽減するのと同時に、権利者の市場における利益を維持するために、非親告罪適用の利用形態をすべての著作物のオリジナル利用(例えば、利用許諾を受けずに音楽、小説又は映画等のすべての内容をインターネットにアップロードする)に限定し、且つ侵害対象は著作財産権者が有償提供する著作物とし、権利者の受けた損害が100万新台湾ドル以上であることをそのハードルとする。 
(三)また非親告罪のハードルに達していない著作権侵害行為についてはなお親告罪の適用があり、知的財産局は「あわよくば」という気持ちで違法行為を行わないよう呼びかけている。
三.衛星放送用及びケーブル放送用信号の配信業者の合法的な権益を保護するため、違法視聴行為によって業者の経済投資が回収できないこと、また合法視聴者が違法視聴者の支払っていない費用を分担するという不公平な状況がもたらされることに対して、違法視聴行為を食い止めるように、暗号化された番組の衛星放送用信号に関する民事、刑事責任及びケーブル放送用信号に関する民事責任規定を新設する。(改正条文第104条ノ1乃至第104条ノ4)
四.改正案施行時期を規定する。(改正条文第117条)
(一)前述のコピーガード措置保護規定及び衛星放送用及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送信号保護条文の改正によって、著作権の保護や関連産業の発展が促されるため、立法院での最終審議通過、総統による公布の後に施行するものとする。
(二)非親告罪の範囲の調整は社会に対する影響が大きいため、今後わが国のTPP参加スケジュールに合わせて、立法院の最終審議通過後に、行政院が改正条文の施行日を指定する。
著作権保護期間を70年に延長する部分については、現行法制では50年でありTPPとはなおも格差があるが、TPP締結国の一部は著作権保護期間を70年に延長するにあたり2~8年の過渡期を勝ち取っている。著作権期間延長はわが国文化産業に対する影響と適応に関わるものであり、また今後TPP交渉過程においてこの議題について過渡期を勝ち取り、関連の法改正に合わせる必要があることも考慮して、この議題を今回の改正案に盛り込むことは見送った。(2016年8月)
TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor