行政院が薬事法改正案を可決、薬品特許リンケージ制度確立を新設
J160805Y9・J160804Y9 2016年9月号(J205)
2016年8月4日行政院会議は衛生福利部(Ministry of Health and Welfare)が提出していた「薬事法」一部条文改正案を可決した。同改正案は立法院へ送られ審議される。
衛生福利部によると、「薬事法」改正は「台米間の貿易・投資枠組み協定」(略称TIFA)交渉及び今後参加を目指す「環太平洋戦略的経済連携協定(略称TPP)」第18章の知的財産保護規定に合わせたものであり、さらに台湾製薬業の発展方向に鑑みて、医薬品データのための保護規定を強化するとともに薬品特許リンケージ制度を構築するものである。
今回の薬事法の改正の重点は以下のとおり。
一.新成分新薬のデータ保護期間規定を改正するとともに、專利法第60条において特許権の効力は(薬事法に定める)医薬品の登録及び販売許可(承認)又は海外での医薬品販売許可(承認)より前の範囲には及ばないと規定されているのに合わせて、重複規定を回避するため、「製薬会社の研究、教学又は試験は新薬特許権の効力が及ばない」との規定を削除する。(改正條文第40条ノ2)
二.新適応症新薬のデータ保護規定を新設。(改正条文第40条ノ3)
三.新薬に係る特許情報の申告及び掲載:「第4章ノ1 西洋薬の特許リンケージ」を新設し、特許リンケージ制度の確立に合わせて、新薬の医薬品許可証所有者は法で定められた期間に物質、組成物又は処方及び医薬用途等の発明特許情報を申告しなければならない。医薬用途の発明の場合は、特許証書番号以外に、明確に請求項の番号も示さなければならない。特許情報に変更又は削除があるときも同じである。またいかなる者も掲載された特許情報が法定要件を満たさない、又は誤りがあると認めたときは、理由を説明し証拠を添付して中央衛生主務機関に通知することができ、該機関はその理由と証拠を新薬の医薬品許可証所有者に渡して(それらの状況を調べさせ)該機関へ応答させる。(第4章ノ1、改正条文第48条ノ3乃至第48条ノ8)
四.後発医薬品の医薬品許可証申請案件はすでに許可(承認)されている新薬の特許状況について声明を提出しなければならない。新薬の特許情報がすでに公開されているとき、販売を許可された後発医薬品に特許権侵害争議が発生し患者の医薬品使用に影響が出るリスクを低減するため、後発医薬品の医薬品許可証申請者は、該特許情報又は該新薬のすでに掲載されているすべての特許権を声明して、医薬品の特許権侵害の可能性を予め明らかにしなければならないと規定する。特許権侵害の疑いがない後発医薬品の医薬品許可証申請案件については、中央衛生主務機関が審査を完了した後、該医薬品許可証を発給する。(改正条文第48条ノ9乃至第48条ノ11)
五.(新薬の)医薬品に特許侵害の疑いがある通知及び後発医薬品の医薬品許可証発給を据え置く手続き:後発医薬品の医薬品許可証申請者が(新薬の)すでに掲載されている特許権は取り消すべきものである、又は該特許権を侵害していないと主張するときは、新薬の医薬品許可証所有者、特許権者及び専用実施権者に通知して、先ずは当事者が特許の有効性又は権利侵害に係る疑いを明らかにできるようにし、中央衛生主務機関は後発医薬品の医薬許可証出願案件の審査を継続することができるが、15ヵ月以内は特定状況を除き、後発医薬品許可証の発給を据え置く。(改正条文第48条ノ12乃至第48条ノ15)
六.(新薬の)特許の有効性に疑いがある、又は権利を侵害していない後発薬の独占販売期間:製薬会社による研究開発や特許侵害回避(デザイン・アラウンド)を奨励するために、先ずは(新薬の)特許の有効性に疑いがある、又は権利を侵害していない後発薬の医薬品許可証申請案件については、医薬品許可証が発給された後、12ヵ月の独占販売期間を取得すると規定する。(改正条文第48条ノ16乃至第48条ノ18)
七.新成分新薬以外の新薬に係る特別規定、経過規定及び関連法制定の権限付与:新成分以外の新薬は性質が特殊であるため、その医薬品許可証申請及び医薬品特許掲載には新薬の医薬品許可証申請の規定を適用すべきだが、それらの新薬がすでに発売を許可された新成分新薬の特許権に関わる可能性もある。この医薬品発売前に特許侵害の疑いを明らかにする立法精神に基づき、新成分新薬以外の新薬も後発医薬品の医薬品許可証の声明等手続きを準用することを定めているほか、今回の改正条文施行前に医薬品許可証をすでに取得した新薬について特許情報申告の期限に係る規定、及び今回改正条文の関連法制定に係る権限付与規定を定めている。(改正条文第48条ノ20乃至第48条ノ22)
八.製薬業界の市場取引の秩序を維持し、製薬会社間又はそれと医薬品特許権者、専用実施権者との間で不公正又は競争制限の協議が行われることを避けるため、本章の関連規定の協議に関わる時の中央衛生主務機関に通報する義務と違反の罰則を明らかに定めている。(改正条文第48条ノ19及び第92条ノ1)
九.今回改正に関わる特許リンケージ制度関連規定については、実務作業において十分な準備と対応が必要であり、行政院がその施行日を定めると規定している。(改正条文第106条)(2016年8月)