著作権法一部条文改正案、行政院院会で可決

J210408Y3 2021年5月号(J261)
    知的財産局はニュースリリースで次のように伝えている。デジタル技術及びインターネットの高度な発展に対応するため、知的財産局は国際条約及び先進諸国の著作権法制度を参考とした「著作権法」一部条文改正案を行政院に提出していた。それは新設条文が計9条、改正条文が計37条に上り、ここ20年来で最大規模の改正となっている。同改正案は2021年4月8日に行政院院会(訳注:日本の閣議に相当)での審査を通過したため、立法院(訳注:国会に相当)に送られることになる。改正のポイントは以下のとおり。
    (一)「公衆放送(Public broadcast)」と「公衆送信(Public transmission)」の定義を調整
デジタルコンバージェンスの統合権規定に対応して、インターネットの帯域幅拡大や科学技術の日進月歩により、インターネットを通じた映像番組のリニア配信(訳注:ネット上で視聴できるが、配信スケジュールが送信側によって決められている)やインターネットラジオ放送が普及することで、消費者が技術の種類で権利のタイプを区別しにくくなっているため、今回の改正では、同じ番組はテレビ局やラジオ局からの放送か、又はインターネットを通じてのリニア配信かを問わず「公衆放送」に該当し、従来のようにネットワーク技術(使用の有無)を以って「公衆放送」と「公衆送信」を区別しないこととした。例えば、ラジオ局「漢聲電台」が通信業者「中華電信」のインターネットラジオ「hichannel」を通じて配信すると、改正後は公衆放送となる。
    (二)「再公衆伝達権」を新設
著作権者に対する保護を強化するため、再公衆伝達権を新設する。例えば、YouTubeの動画を売り場で放映する場合、改正後は再公衆伝送に該当し、著作権者の権益が保護されるようになる。
    (三)著作財産権の制限(公正使用)を改正
著作権法は著作権者の権益を保障すると同時に、社会の公共利益との調和が必要であるため、公衆が著作物を合法的に利用できるよう、以下のように改正する。
1.学校のリモート授業における公正使用を新設する。科学技術の発展に伴い、学習効果の向上のためにインターネット技術を用いたリモート授業を行うという需要に対応して、教師が他人の著作物(教科書を除く)を使用する場合は、利用許諾を得る必要をなくして、デジタル時代の教育政策を着実に実現できるようにする。
2.デジタル・リーディングの普及を考慮して、図書館等のアーカイブ機関(原文:典藏機構)が適切な要件で制限される環境において、読者に館内でオンライン閲覧を提供できるようにする。
3.美術館で収蔵する文化資産を広めることを目的として、民衆が収蔵品を探したり、どの機関に収蔵されているかが分かるようにしたりするため、アーカイブ機関による著作物のガイドに係る公正使用を新設して、文化の伝承や流通という目的を達成する。
4.経常的に開催される非営利活動において、許諾を得ずに利用すると刑事責任が発生するという問題が発生するため、今回の改正では、経常的に開催される非営利活動を非犯罪化して、適正な利用報酬(使用料)を支払うだけで利用できるようにし、著作権者に許諾を得る必要がないようにする。例えば、劇団が毎週非営利活動を行う場合、利用報酬を支払うだけでよく、権利侵害にはならない。さらに公衆が日常的に公園でダンス等の健康のための活動を行い、自分の携帯電話で音楽を流す場合は、利用報酬を支払わずに利用できる規定を新たに定め、人々のニーズに合わせる。
    (四)著作財産権者不明の強制許諾規定を新設
年代が古いため又はその他の原因によって著作財産権者が不明である又はその所在が不明である著作物について、利用の許諾が受けられない場合、文化の伝承と流通が滞ってしまうので、文化産業の発展を促すため、今回の改正では、現行の文化創意産業発展法における著作財産権者が不明な著作物の強制許諾規定を著作権法に移行し、さらに適時性も考慮して、審査期間において、申請人が保証金を納付すれば、先に利用を許可する規定を新設して、申請人が所轄機関の許可を待つ時間を短縮する。
    (五)ネット上での模倣品販売を目的とする広告掲載を権利侵害とみなす規定を新設
現在、ネット上に商品販売の情報を掲載することが主要な販売の手段となっており、模倣品が販売されれば、著作権者に大きな影響をもたらすため、早急に模倣品の流通を阻止する必要があり、ネット上での模倣品販売広告等の情報掲載を権利侵害とみなす規定を新設する。例えば、ネット上に海賊版音楽ファイルを含むUSBを販売する、又はゲーム機を購入すると海賊版のゲームソフトが無料で付いてくる等の広告を掲載した場合は、2年以下の懲役に処され、民事責任も負わなければならない。
    (六)使用料(ロイヤルティ)を基に民事損害賠償を請求できる規定を新設
権利侵害の被害者が民事訴訟を提起し、裁判所に賠償額の判定を請求するときに利用許諾によって得られる使用料を損害額算出の依拠とすることを選ぶことができる規定を新設して、被害者の挙証責任を軽減し、刑事訴訟の代わりに民事訴訟を提起する意欲を高める。
    (七)厳しすぎる刑事責任の規定を調整
現行の著作権侵害に係る一部の規定において法定刑の下限は6ヵ月であり、罪状が軽微な事件では刑罰が重すぎるという問題が生じる可能性がある。今回の改正では、下限規定を削除し、裁判所が事件毎に斟酌して、刑事責任が重過ぎるという問題を回避できるようにする。(2021年4月)


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