秘密漏洩で告訴された葡萄王生技公司前総経理 最高裁判所の無罪維持で判決確定
J210806Y4 2021年9月号(J265)
葡萄王生技股份有限公司(Grape King Bio Ltd.)の前総経理である曾盛陽氏は、実弟でありかつ同社の現董事長でもある曾盛麟氏から、同社の「康貝兒乳酸菌」の処方を窃取したとして告訴され、営業秘密法等の罪で起訴された。ただし刑事裁判の一審、二審ではいずれも関連の乳酸菌成分は経済性(経済的価値)要件と合理的な秘密保持措置要件を満たしていないため、営業秘密に該当しないと認められ、曾盛陽氏等は無罪と判決されており、最高裁判所もその見解を維持して、上訴を棄却し、無罪判決が確定した。
検察側は(起訴状において)次のように指摘した。曾盛陽氏は2016年に同社に在職中の従業員にコンピュータから関連文書をダウンロードさせ、「康貝兒乳酸菌」処方(以下「乳酸菌成分書」)を取得した。その後曾盛陽氏はネットのブロガーに乳酸菌成分書を提供し、同ブロガーは自らが運営する「小格子媽咪的部落格(小格子ママのブログ)」に「恐怖的直銷益生菌配方(怖い直販のプロバイオティクス処方)」というタイトルの文章を発表し、乳酸菌成分書の写真をその文章の添付図としてアップロードした。
桃園地方裁判所は一審にて、営業秘密は「この種の情報に通常関わる者が知らないもの」、「その秘密性によって実在的又は潜在的な経済的価値を有するもの」、「保有者がすでに合理的な秘密保持措置を講じているもの」という三大要件を満たす必要があり、該乳酸菌の一部の処方が漏洩されたことによって、葡萄王に経済的損失や競争力の低下がもたらされるに至っておらず、しかも処方が営業秘密であるならば管理上講じられるべき合理的な秘密保持措置が講じられておらず、該処方は営業秘密に該当しないと認定し、曾盛陽等すべての被告人に無罪と賠償免除の判決を下した。
本件は上訴され、知的財産裁判所は二審において、乳酸菌成分書の記載内容は、業界で容易に知り得る資料であり、秘密性がなく、また実在的又は潜在的な経済的価値も有さないと認め、一審と同様にすべての被告人に無罪と賠償免除の判決を下した。最高裁判所は原審の見解を維持して、上訴を棄却して判決を確定した。別途提起された刑事付帯民事賠償部分について、裁判所は刑事判決が無罪であったため、法により付帯民事賠償請求を許可せず、申立てを却下した。(2021年8月)