「武林群俠傳」の著作権帰属はなお検討が必要、最高裁判所が知的財産及び商事裁判所へ差し戻し
J220325Y3 2022年4月号(J272)
最高裁判所は先日、河洛遊戯有限公司(Heluo Games Co., Ltd.、以下「河洛公司」)と智冠科技股份有限公司(Soft-World International Corporation、以下「智冠公司」)との間の著作権侵害に係る財産権の紛争等事件について、原判決における河洛公司の上訴を棄却する部分等を破棄して、知的財産及び商事裁判所に差し戻す判決を下した。
智冠公司は、次のように主張している。2001年8月27日にリリースされたロールプレイングゲーム「武林群俠傳」は、智冠公司の前従業員である徐昌隆が雇用期間に業務上完成したものであり、著作財産権は智冠公司に帰属する。徐昌隆は2014年3月7日に河洛公司を設立し、該公司が2015年7月にリリースしたゲーム「俠客風雲傳」は「武林群俠傳」を盗作又は改作したもので、智冠公司の著作財産権を侵害している。徐昌隆は河洛公司の法定代理人であり、智冠公司が受けた損害に対して、連帯で賠償責任を負うべきである。
一方、河洛公司は次のように主張している。徐昌隆は1994年12月26日に智冠公司と雇用契約書を交わしているが、智冠公司はコストを制御するため、1996年1月23日に徐昌隆が設立した河洛工作室(河洛公司の前身)と「コンピュータゲーム委託制作契約書」を交わし、智冠公司はゲームの著作権使用料を先払いし、資金、オフィス、コンピュータ設備を河洛工作室に提供し、さらに工作室(スタジオ)のメンバーの労働保険、健康保険及び税申告を代わりに処理することを約定している。河洛工作室は智冠公司内部の部署ではなく、徐昌隆と及工作室のメンバーはいずれも智冠公司の被用者ではなく、「武林群俠傳」は河洛工作室が創作したもので、徐昌隆が智冠公司に雇用されている期間に職務上完成したものではなく、智冠公司は委託制作契約書に基づいて版権を取得したに過ぎない。
知的財産及び商事裁判所は、第一審判決において河洛公司及び徐昌隆に2400万新台湾ドルの賠償を命じるとともに、「俠客風雲傳」の頒布及び公開送信の継続を禁じ、さらに新聞第一面に判決主文を1日掲載することを命じた。同裁判所の第二審でも第一審判決が維持され、河洛公司が上告を提起した。
最高裁判所は、第二審では証人の供述と徐昌隆の労働保険の資料だけで、「武林群俠傳」が徐昌隆の智冠公司における雇用期間に職務上完成したものだと認定しており、なお議論の余地があること、さらには智冠公司が「武林群俠傳」の著作財産権を所有するのか、いつ「俠客風雲傳」の内容を知悉したのかなどは、損害賠償の請求、侵害の排除、新聞広告掲載による名誉回復を請求できるのかと密接な関係があることから、いずれも事実審で明らかにするために、併せて破棄し、差し戻す必要があると認めた。(2022年3月)