リモート教育のニーズに対応 著作権法一部条文改正案が立法院第三読会を通過
J220527Y3 2022年6月号(J274)
知的財産局のニュースリリースによると、科学技術の発展、教育政策及びコロナ禍におけるニーズに対応するため、「著作権法」一部条文改正案が2022年5月27日に立法院の第三読会を通過したという。学校の教室で行われる授業の延長としてのリモート授業については、他人の著作物を利用する時は公正使用できると規定することで、教師が安心して授業をできるようになる。同時にデジタル教育政策に合わせて、教科書の編纂者は電子ファイルの伝送で教師と生徒の使用に供することができるようにして、「電子書包」(訳注:「電子書包」は電子スクールバッグの意。デジタル教科書、副教材、辞典などが含まれる学習端末を指す。)の運用で学生が重たいスクールバッグを背負う負担を軽減する。さらに国家の文化発展を促すため、国家図書館が一定の要件を満たす前提の下、それが所蔵する著作物をデジタル化することで複製し、館内でのオンライン閲覧を提供できるようにする。今回の改正の重点は以下の通り。
一、学校が在籍する学生に対して行うリモート授業については、他人の著作物を公正使用できる規定を追加
現行法において、教師は教育の現場で授業を行う際に合理的な範囲内で資料をコピーして学生に配ることのみ許されている。科学技術の発展に対応するため、教師がオンラインで授業をする場合、通常の教室での授業に照らして、教師が授業を行う目的で必要な範囲内で、参考とする文章や資料を、インターネットを通じて学生に提供できる規定を特に追加した。これにより新型コロナウイルス感染で登校が停止された際のリモート授業の需要に対応し、学習効果を拡大することができ、また国際的な潮流や科学技術の発展動向に適応することができるようになる。さらに、著作権者の権益を過度に侵害することを回避するため、学校が合理的な技術的措置(例:IDパスワード)を採り、その科目を履修していない学生が授業を受けることを防止するよう規定する。また、この種のリモート教育は公益性が極めて高いため、学校の教師が授業において他人の著作物を使用するときは、著作物使用料を支払って利用許諾を得る必要をなくして、教育活動の実施に役立てる。(第46条)
二、非営利的なリモート教育は他人の著作物を利用できるが、著作権使用料を支払わなければならない規定を追加
一般大衆を対象とするリモート教育形態(例:非営利目的の大規模公開オンライン講座(MOOCs)を提供するプラットフォーム「edX」等)については、現行法では空中大學(訳注:国立の通信制大学)のようなテレビ授業についてのみに公正使用が認められているが、オンライン課程では認められていないため、学校、教育機関がネット上でリモート授業を行う場合、他人の著作権を公正使用できる規定を追加した。この種の利用形態は従来のラジオ、テレビの放送以外に、ネット上の同期、非同期伝送での利用も包括し、しかも授業を受ける対象が一般大衆で、きわめて幅広く、前述の在籍学生という対象とは異なるため、教育の目的で必要な範囲内での使用とするとともに、(利用者は利用状況を著作財産権者に知らせて)著作権利用料を支払う必要があり、著作財産権者の権益も守られる。営利目的のリモート授業、例えば学習塾等の教育機関によるオンライン課程は公益性がないため、明らかに利用許諾を取得する必要があると規定し、著作財産権者の権益を守る。(第46条の1)
三、教科書の編纂者は電子ファイル伝送で教師と学生の使用に供し、「電子書包」という教育のニーズに対応
現行規定では教科書の編纂者は教科書の検定又は編纂・改訂を完了するために、他人の著作物を使用できるが、紙媒体で教師と生徒の使用に供することしかできず、デジタル時代に学生が「電子書包」を使用するニーズに対応できない。よって今回の改正では、教科書の編纂者がインターネットを通じて教科書を(電子ファイルで)伝送できるという公正使用の規定を追加している。また著作財産権者の権益を守るため、この利用形態も著作財産権者に著作権使用料を支払う必要がある。(第47条)
四、国家図書館は所蔵著作物のデジタル化による複製と館内におけるオンライン閲覧が可能に
国家図書館は文化発展の促進を目的として、所蔵著作物の紛失、破損を回避する必要に基づき、まずは著作物のデジタル化による複製を行ってもよいという規定を追加し、これにより国家図書館の現代著作物を完全に保存できるようにする。さらには国家図書館又は一般の図書館等の機関で一定の条件を満たす前提の下、館内でのオンライン閲覧に供し、元来の紙媒体の所蔵図書の貸出しや閲覧に替えるという公正使用の規定を追加する。この改正は図書館のデジタルサービスに役立つ他、紙媒体の所蔵著作物を保存するのに有益となる。(第48条)
経済部では次のように述べている。デジタルの発展で著作物の利用が多元化し、近年世界中で新型コロナウイルス感染症の影響を受け、リモート教育が重要な学習の手段となっている。今回の改正は、デジタルテクノロジーの発展による学習効果の拡大、「電子書包」のニーズ、図書館における所蔵著作物の保存とデジタルサービスの促進に対応するためのものであり、立法院が著作権法改正案を可決したことで、台湾のデジタル時代における教育政策のニーズに応え、教育の多元的発展を推進することができ、知識拡散にとって重要な意義を持つ。(2022年5月)