「Boy London」商標登録訴訟 最高行政裁判所は不登録の判決
J220818Y2 2022年9月号(J277)
得恩堂眼鏡有限公司(Grace Optical Co., Ltd.、以下「得恩堂公司」)は2018年2月26日に「Boy London」を以て知的財産局に商標登録を出願し、知的財産局は審査した結果、当該商標が公衆にその商標の商品又は産地について誤認、誤信させるおそれがあるため、不登録査定を下した。得恩堂公司はこれを不服として、行政訴願を提起したが経済部に棄却されたため、さらに知的財産裁判所(当時)に行政訴訟を提起して、訴願決定及び原判決の取消を請求し、知的財産局は当該商標について登録査定を下すべきだと主張した。その後、知的財産及び商事裁判所の判決(108年度行商訴字第31号判決)にて、得恩堂公司の請求が認められたため、知的財産局はこれを不服として上訴を提起していた。最高行政裁判所は2022年8月18日に原判決を破棄し、得恩堂公司の第一審請求を棄却する判決を下した。
最高行政裁判所は判決書において次のように指摘している:「Boy London」商標は2つの英単語から構成され、「ロンドン男子」という意味である。ロンドンは有名な大都市であり、英国の首都であり、政治、文化、芸術、ファッションの中心地であり、台湾人にとって広く熟知されている都市名となっているため、「London」という一単語だけで「Boy London」商標とロンドンという都市との関連性を強烈に示すことができる。また「Boy London」商標の2つの単語のうち、消費者(需要者)の注意は「London」という単語に容易に惹きつけられる。該商標の指定区分については、老若男女問わずいずれもその役務を受ける消費者となり得るものであるため、「Boy」は特殊な意味を持たない普通名詞であり、見過ごされやすく、また「Boy London」商標が使用を指定する商品又は役務は、消費者にロンドンから来た又はロンドンと関連のある商品又は役務であるという錯覚をもたらし、商標として用いると、客観的にみて、当該商標が指定する商品又は役務の品質、性質又は産地について誤認、誤信を消費者にもたらすおそれがあるはずである。原判決では、台湾人は初歩的な英語において認識と識別の能力を有し、アルファベットを用いる外国語においては最初の一語に重きが置かれ、「Boy London」商標の顕著な部分は「Boy」であって「London」ではなく、「Boy London」について商標の文字全体の外観、観念又は称呼等の要素について直接的かつ客観的に判断すると、消費者に「Boy London」商標を表示する商品又は役務の産地又は提供地が英国又はロンドンと関係あると誤認、誤信させるには至らないこと、「Boy London」という名称は商品の機能、用途及び品質とは無関係であるだけではなく、社会の大衆が知悉する普通名詞ではなく、係争商標が英国の首都名と同一である又は暗示していると誤認、誤信させるに至らないこと、また、当該商標の中に「London」を有することで、「Boy London」商標を表示する商品又は役務の産地又は提供地が英国又はロンドンと関連があると関連の消費者に誤認、誤信させるに至らないこと等を指摘している。審理したところ、消費者の立場から、商標自身の図案や文字等の全体の外観、観念又は称呼が人に与える印象が商品又は役務の性質、品質又は産地に対して誤認、誤信をもたらす可能性についての観察を行っていないのは、確かに不適切な箇所がある。
さらに本件原処分において「Boy London」商標の登録には商標法第30条第1項第8号に規定される不登録事由があるため拒絶したこと、訴願決定においては原処分が維持されたことには法に合わないところがない。原判決では、原処分及び訴願決定で「Boy London」商標の登録を拒絶したことについて法に合わないとして、訴願決定と原処分が取り消され、知的財産局に「Boy London」商標の登録出願に対する登録査定を下すよう命じたことには誤りがあり、本件上訴には理由がある。(2022年8月)