「春天」の二文字で混同、商標権訴訟で「瑞穗春天」の敗訴確定
J220916Y2 2022年10月号(J278)
瑞穗天合國際觀光酒店股份有限公司※(以下「瑞穗天合」)は「瑞穗春天國際GRAND COSMOS SPA及び図」等商標の登録を経済部知的財産局に出願して登録を許可されたが、その後、春天酒店股份有限公司※※(以下「春天酒店」)が無効審判を請求し、知的財産局が無効審決を下したため、登録が取り消された。瑞穗天合は行政訴願を提起したが棄却されたため、行政訴訟を提起した。知的財産及び商事裁判所(旧名:知的財産裁判所)でも敗訴したため、瑞穗天合は最高行政裁判所に上訴していたが、先日瑞穗天合の上訴が棄却された。(訳注※:英語名はGrand Cosmos Resort Ruisui, Hualien Co., Ltd.。「瑞穗春天國際觀光酒店股份有限公司」から改名。)(訳注※※:英語名はSpring City Resort Co., Ltd.。)
知的財産及び商事裁判所は判決において、次のような判断を示した。両商標はいずれも同じ文字「春天」を含み、「瑞穗春天國際GRAND COSMOS SPA及び図」商標における「瑞穗」は台湾花蓮県の瑞穗郷を示すものであり、役務を提供する場所の説明であること、「國際」は通常ボーダーレス企業又は業務の国際化を示すものであり、消費者(需要者)に(役務の出所を)識別させることは難しいこと、「SPA」は業務の種類の説明であることから、以上の相違点はすべて説明の用語であり、主な識別部分にはなお「春天」が含まれ、春天酒店の「春天」商標と同じであり、商標全体が消費者に与える一見したときの印象、観念、称呼が類似しており、同一の又は類似の商品又は役務に標示されたならば、通常の知識と経験を有する消費者が、購入時に通常の注意力を払うとき、(両商標の役務が)同一の出所からのものである、又は出所は異なるが両商標の間に関連が存在すると誤認させる可能性があり、類似を構成する商標に該当する。
さらに「瑞穗春天國際GRAND COSMOS SPA及び図」商標が使用を指定する役務を「春天」商標の指定役務と比べると、両者の役務は消費者が有する同一の又は類似の需要を満たすものであり、同一又は高度に類似する役務に該当する。「春天」商標における「春天」の二文字はよく見かける単語であり、美容、ヘアケア、サウナ、マッサージ等の指定役務と直接の関連性を有さないが、消費者にそれが表彰する役務の出所を認識させるに十分な標識であり、他人の役務を区別することができ、識別性を有する。
春天酒店は1975年に設立され、経営している事業にはホテル及び付設のレストラン、公衆浴場等が含まれ、1997年から多くの商標が出願、登録されており、その中には「春天」、「春天酒店」等の文字が含まれ、レストラン、ホテル、美容・ヘアケア、サウナ、マッサージ等役務での使用を指定している。「瑞穗春天國際GRAND COSMOS SPA及び図」商標が2014年7月17日に登録出願されたとき、春天酒店はすでに「春天酒店SPRING CITY RESORT及び図」、「春天酒店及び図」等商標をレストラン、宿泊、温泉浴場等役務で使用していた。「春天」商標は北投(訳注:台北市内の温泉地)で経営される春天酒店を以って関連する消費者に知られている。「瑞穗春天國際GRAND COSMOS SPA及び図」には地名「瑞穗」が「春天」の前につけられているが、関連の消費者に両者が同一の出所又は異なるものの関連する出所からの役務であると誤認させ、誤認混同を生じるおそれがある。
最高行政裁判所は原判決には誤りがないとして、瑞穗天合の上訴を棄却した。(2022年9月)