許諾を得ずに20ナノルール技術を複製、南亞科技の元エンジニアに懲役1年10月の判決

J240304Y4 2024年4月号(J296)

 台湾プラスチックグループ傘下旗下のDRAMメーカーである南亞科技股份有限公司(Nanya Technology Corporation、以下「南亞科技」)でシニアエンジニアとして働いていた李智存は、中国の西安紫光国芯半導体有限公司(Xi'an UniIC Semiconductors Co., Ltd.)に転職して高い給料を獲得できるように、2016年にパソコンのスクリーンショットにより南亞科技の最新技術である20ナノプロセス技術を複製したとして、最高裁判所は原審の見解を維持し、李被告人が「中国地区での使用を目的として、許諾を得ずに営業秘密を複製した罪」により懲役1年10月の判決を下し、確定した。
 李被告人は南亞科技が2016年に米マイクロン社から20ナノプロセス技術を導入すると知り、オンライン訓練課程への参加や休日を利用して、オフィスにおいてパソコン画面をスクリーンショットする方法で、20ナノプロセス関連の書類を複製し印刷して勉強して暗記し、2017年1月17日には中国で紫光公司の面接を受けたが採用されなかった。その後、南亞科技は離職者に対してルーチンのコピー記録検査を行った際に、李被告人が大量にコピーした記録を発見し、詳しく調べた結果、李被告人が20ナノプロセス関連書類をすべて印刷していたことを発見し、すぐに法務部桃園市調査処に通報し、検察の捜査終結後に李被告人を起訴した。
 裁判所の審理において、李被告人は、20ナノDRAMウエハプロセスを紹介する(パワーポイントの)スライドをスクリーンショットの方法で保存した後に印刷し、紫光公司のオンライン面接又は中国での面接を受けたことを認めたが、スライドの内容は営業秘密ではなく、印刷した目的は自分で勉強するためだけであったと主張した。
 しかし桃園地方裁判所の一審、知的財産及び商事裁判所の二審ではいずれも、関連証拠から李被告人がスクリーンショットした文書にはDRAMの20ナノプロセスの原理、データ、課題、技術、実施及び重要事項等の内容が含まれており、いずれもDRAMウエハ製造に従事する者が容易に知り得るものではなく、しかも生産能力や歩留まり率に対して大きな影響を与え、大きな経済的価値を有することが分かるため、李被告人がスクリーンショットした資料は南亞科技の営業秘密であると認められた。
 一、二審では李被告人が許諾を得ずに南亞科技の営業秘密を複製してはならないことを明らかに知りながら、転職の面接のために、大きな経済的価値を有し、且つ企業の存続に係る先端プロセス技術を複製したことを考慮し、さらに李被告人が犯行を否認したことを斟酌して、懲役1年10月に処する判決を下し、最高裁判所は上訴棄却を確定した。(2024年3月)

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