商標登録出願の早期審査制度がスタート、登録を急ぐ業者は上手く活用を
J240613Y2 2024年7月号(J299)
経済部知的財産局による「商標登録出願の早期審査制度」が2024年5月1日正式に運用を開始し、商標登録を急ぐ出願人に対してできるだけ早く商標を登録できるルートを提供している。知的財産局によると、早期審査制度には二大要件があるという。一つ目がすぐに権利を取得する必要性、つまり「緊急性」があることであり、業者は早期審査の申請時に急ぐ事実を確かに有する必要がある。二つ目は「利用者費用負担の原則」であり、別途早期審査費を徴収する必要がある。原則的に、早期審査要件を満たす出願は、早期審査の申請が受理されてから2ヵ月以内に最初の審査結果の通知(ファーストアクション)が出されるが、個別の案件において、審査過程で補正通知又は審査の中止が必要な場合は、早期審査の利点に影響を及ぼし、短期間で審査結果を出すことはできない。
商標登録出願の早期審査申請の要件と方法は難しいものではない。商標登録を出願した後、最初の審査結果の通知が出るまでに、出願人にすぐに権利を取得する必要性がある場合は早期審査を申請することができる。基本的に「出願におけるすべての指定商品及び指定役務がすでに使用されている又は使用の準備が相当程度に進められている場合」(類型一)、又は「一部の指定商品又は指定役務についてのみすでに使用されており、業として権利を取得する必要性及び緊急性がある場合」(類型二)に係る事実証拠を提出できるとき(例えば、出願商標が第三者に無断で使用されたとき、第三者から使用許諾を求められているとき、すでに販売又は出展が企画されているとき等)は、早期審査申請の要件を満たす。
現在早期審査の申請がなされている出願案件の中で、早期審査要件を完全に満たした初の案件が、本日登録査定された。この案件を例に挙げると、2024年3月1日に商標登録出願がなされた後、出願人は第三者から商標使用許諾を求められたため、すぐに権利取得の必要性があるとして、2024年6月4日に早期審査の申請を提出し、一区分当たり6000新台湾ドルの早期審査費を納付するとともに、商標使用許諾契約書等の証明書類を提出していた。審査した結果、商標を登録できない理由がないため、2024年6月13日に商標登録をすべき旨の査定書が発せられた。現在の商標登録審査におけるファーストアクションまでの平均期間が約6.2ヵ月、最終処分までの平均期間約7.5ヵ月と比べると、(早期審査は)出願人にとって審査待ち時間を短縮でき、ビジネス戦略と権利保護に寄与するものとなっている。
知的財産局では以下の事項について特に注意を喚起している。個別の案件において何らかの事情により短期間で審査結果を出せない場合(例えば、非伝統的商標タイプの出願である;商標が争議事件に関わっている;指定商品又は指定役務の名称が含む範囲が広すぎる又は明確ではない等)があり、通常は審査過程において、補正又は審査の中止が必要であり、早期審査の利点に影響を及ぼすことがあるので、出願人は(早期審査を申請する前に、自らの出願案件に上述の状況があるか)を評価する必要がある。また、出願商標の図案が実際に使用されている商標と完全に同一である必要があり、そうでない場合、早期審査の要件を満たすことはできない。さらに、出願人は申請する前に、先願又は先登録の商標に抵触する可能性を減らし、早期審査の利点を十分に生かせるよう自ら事前に調査する必要がある。また、早期審査の申請後に審査をして、早期審査要件を満たさないことが分かっても、早期審査費は返還しない。
台湾の商標法は先願主義を採用しており、出願順に審査を行う必要があるが、商標登録出願が年々増加しており、審査人員が限られている中、審査時間を短縮するには限界がある。しかしながら産業発展と公衆の権利保護という必要性から、商標法を改正して早期審査制度の規定を追加している。商標登録出願人がすぐに権利を取得する必要性があるときは、一般の出願案件の審査スケジュールを圧迫することを回避しつつも、利用者が費用負担するという原則を考慮して、早期審査制度の導入により、迅速に商標を登録できるルートを提供することで、商標登録の効率を大幅に高めることができる。知的財産局ではすぐに権利を取得する必要性がある出願人に早期審査制度を活用するよう呼び掛けている。(2024年6月)