ブート商標に大きな痛手、仏LVからの提訴で、421万新台湾ドルの損害賠償支払い命令判決
J240718Y2 2024年8月号(J300)
翻玩創意股份有限公司(以下「翻玩公司」)は2020年1月8日から、仏ルイ・ヴィトン社(Louis Vuitton、以下「LV」)の許諾又は同意を得ず、翻玩公司が台北市中山区で経営する「MFLIFE MADE IN FUTURE NEW AMSTERDAM中山店」でLVの図案を付した商品を販売し、またLVの図案を店内の内装、掛けられている絵、テーブルとイス、価格表及びドリンクの装飾などに大量に使用し、さらにそれが運営する「MF LIFE中山」FacebookページにおいてLV図案を使用して宣伝を行っていた。仏LVは海外から提訴して損害賠償を請求し、翻玩公司とレストランに権利侵害行為の停止を求めた。知的財産及び商事裁判所は、翻玩公司及び元代表者2名に商標権侵害行為の継続を禁止し、侵害物品を滅却するとともに、421万余新台湾ドルの損害賠償金を支払うよう命じる(さらに上訴できる)との判決を下した。
LV社は次のように主張している。著名商標であるLouis Vuitton(LV商標)は2008年から連続して世界の著名商標トップ20に入っており、商標の価値は470億米ドルに上っている。LV商標は高い識別性を有し、台湾の一般消費者によく知られている。しかしながら翻玩公司が使用する図案(被告図案)は故意にLV商標を模倣しており、捻じれた人の形の図案を含み、「V」の形状をした人の図案にある手提げバッグにはLV社の有名な商品Speedyが表示され、かつ被告図案とLV商標はいずれもアルファベット「L」と「V」が重なる構成を有し、菱形、四葉及び花の図案が繰り返して配列されており、全体の構成、様式、色、デザイン及び外観がいずれもLV商標と高度に類似している。さらに、該商店の内装に被告図案が大量に使用されており、被告の商品そのものは面積の半分以上に、または商品の中央の目立つ場所に被告図案を使用しており、消費者を引きつけるため被告図案を販売の主な訴求としていることがわかり、それらの行為は商標の使用行為に該当し、消費者に誤認混同させるおそれがある。
一方、翻玩公司は次のように主張している。該商店内で販売している商品は米斯美客股份有限公司(MF production co.)が経営する「MF BY GCDC」ブラントのブート品であり、当該ブランドはその商標を有する。「MF BY GCDC」ブランドの商品はいわゆる「ブートレグ」の創作であり、周りに流されず、贅沢なブランドを追い求めないことを伝え、諧謔やユーモアというパロディの手法で有名ブランドの商標に改造するもので、反逆と独立独行で自分らしく生きるという精神を伝えている。しかも、悪ふざけと風刺を核心とする二次創作の文化「ブートレグ」はかつてストリート文化においてトレンドとなったもので、消費者は当該店舗において商品を選ぶ際に買おうとするものが「MF BY G.C.D.C」ブランドの商品であり、LV商標の商品とは無関係であることを明確にわかっている。
知的財産及び商事裁判所は(審理の結果)次のように認定した。双方が使用する商標は高度に類似しており、LVは世界の有名な皮革製品、スーツケース等のブランド品メーカーであり、関連の商品は台湾においてメディアに広く報道され、かつ有名人が愛用しており、LV商標は消費者が熟知する著名商標で、判別性が極めて高い。翻玩公司は被告の商品及び商店内の内装、物品に、LV商標と高度に類似する被告図案を大きな面積をとって使用しており、かつそれが被告商品を販売するサイトのページにおいて、商品名に「Monogram」、「LV」等の文言を使用し、さらには「LV bag」、「LV Tee T-shirt」等と命名し、LV商標の名称を直接商品名としており、消費者に被告商品についてLV商標のブランド品のイメージを容易に連想させ、消費者を混同させ、他人のグッドウィルにただ乗りする意図があり、被告の善意を認めがたい。(2024年7月)